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給与減額に関する労働者の同意の有無

大阪地方裁判所平成26年(ワ)第30025号,平成26年(ワ)第30026号 平成27年3月26日第5民事部判決

(1)労働契約において,給与は最も基本的な要素であるから,給与減額に関する口頭でのやり取りから労働者の同意の有無を認定するについては、事柄の性質上,そのやり取りの意味等を慎重に吟味検討する必要があるというべきである。

ア 以上を前提に本件を検討することになるところ,被告は,原告が本件給与減額に同意していたと主張し,認定事実(5)イのとおり,原告が1月のミーティングにおいて「しゃあないですね」と発言したことは認められる。 

 しかし,P2は,陳述書(乙21)及び被告代表者尋問において,1月のミーティングでP2が原告に対して給与減額への協力要請についての返答を求めると「しゃあないですね」と曖昧に返答したので,さらに平成25年2月分の給与から減額させてもらうと返答を迫ると原告は再び「しゃあないですね」と答えたと供述するが,原告は,陳述書(甲11)及び本人尋問において,1月のミーティングでは給与減額について「難しいです,生活が厳しい」などと異論を述べた,同ミーティングにおける,「しゃあないですね」と発言したが,これは売上げが減少していることに関しての発言であると供述する。このように,原告の前記発言の経緯や意図するところについて両者の供述が齟齬するところ,この際のやりとりに関して特段の書面等も作成されておらず,いかなる趣旨で原告が前記発言をしたのかは必ずしも明らかではない。そして,P2の供述を前提にしても,原告の給与減額に対する返答としては「しゃあないですね」という極めて曖昧なものであり,給与減額には納得できないが,P2との関係で角が立たないように曖昧な返答にとどめたとも理解しうる言い回しであることをも併せ考慮すれば,原告の「しゃあない」という発言が,本件給与減額に同意する趣旨のものであるかについて,その前後の事情を踏まえて吟味するのが相当である。

イ(ア)原告の被告への関与の度合い及び被告の経営状態

a 認定事実(1)アのとおり,P2は,原告の依頼を受けて被告を設立したのであり,原告は被告設立と深く関わっており,その上,認定事実(2)イ,ウのとおり,原告は被告の専務取締役兼営業本部長としてP2と経営に関するミーティングを行うなど経営にも深く関与していたこともうかがわれる。

 また,認定事実(3)のとおり,被告における売上げ,特に労働者派遣事業の売上げは,平成24年7月以降,減少傾向にあり,その理由が法規制の強化等の影響であることからすれば,今後,労働者派遣事業による売上げが改善する見通しもなかったのであり,何らかの対策を講じる必要はあったといえる。

b しかし,認定事実(2)エのとおり,原告は,被告の資本関係に関しては被告の増資の際に一旦,出資金の一部を立て替えたにすぎない。

 また,P2については,認定事実(3),(4)アのように被告の経営状態等に応じて被告からの報酬額等が変動したのに対して,認定事実(5)ウのとおり原告の給与額は入社後一貫して50万円であり,原告は経営者として売上げが増加したことによる恩恵にあずかったことはない。

 さらに,原告には,P2のように認定事実(4)イのような別途の収入源はなく,認定事実(5)ウのとおり,本件給与減額により,預金を取り崩して生活することを余儀なくされるなど,本件給与減額が原告やその家族に与える打撃は大きかったことも認められる。

c そうすると,前記aのとおり,原告が被告設立の経緯や経営に深く関与しており,被告は経営状態の悪化に対して何らかの対応を迫られていたとはいえるにしても,前記bの各事情を考慮すれば,原告が,被告の経営難を救うため,自らとその家族の生活を犠牲にして給与の2割減額という重い負担を甘受する合理的な理由はないといわざるを得ない。

(イ)原告が本件給与減額に異議を述べたり,本件協議の際に差額給与の支払を請求していないこと

a 認定事実(5)アないしエのとおり,原告はP2から2度にわたり給与減額への協力要請を受けており,本件給与減額後にはP2に異議を述べることなく,減額後の給与を受領し,認定事実(7)イのとおり,本件協議の際,本件給与減額について言及しながら,差額給与の支払を求めてはいないことは認められる。

b しかし,原告が,本件給与減額に異議を述べなかったのは,認定事実(5)エのとおり,諦念からであるといえる。

 また,原告は本件協議の際,本件給与減額に言及しながら差額給与の支払を求めていない。しかし,原告が本人尋問において,差額給与を請求することになったのは原告代理人に相談した際に指摘を受けたためであり,労働者の同意なく給与を減額することはできない旨の法的知識は余りなかったと供述することを踏まえると,原告が労働者の同意のない給与減額は無効であり支払請求できるとの認識がなかったためであるとも理解できる。そして,認定事実(7)イのとおり,原告は,本件協議の際に本件給与減額は痛かったと不満を漏らしているのであるから,本件給与減額に不満があり,これに同意していなかったことをうかがわせる事実ともいい得る。

c そうすると,前記aのとおり,原告が本件給与減額に異議を述べたり,本件協議の際に差額給与の支払を請求していないことはあるにしても,前記bのとおり,直ちに,本件給与減額に同意していたことを推認させる事実とはいえない。

(ウ)Y社の設立及び退職

 原告はP2に対して給与の増額を求める代わりに収入を上げるため新たにY社を設立し(認定事実(5)エ,オ),被告を退職した(認定事実(6))のであり,原告のこれらの行動は,被告を見限るものとも評価し得るものである。

 そうすると,原告のこれらの行為は,被告の経営難を乗り切るために自らを犠牲にして本件給与減額に同意する行動とは矛盾する行動であり,原告が本件給与減額に同意していなかったことの表れであるとも評価できる。

(エ)まとめ

 以上のとおり,前記の諸事情を総合考慮しても,原告が本件給与減額に合意していたものとは認め難く,その他,原告が本件給与減額に同意したと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することも認められない。

 よって,原告の「しゃあないですね」という発言をもって,原告が本件給与減額に同意したものと認めることはできず,被告の原告が本件給与減額に同意していたとの主張は理由がない。



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