非正社員(パートタイム労働者、アルバイト社員)に対する労務コンプライアンスの重要性が説かれるようになっております。そこで、近時の裁判例をニュースよりご紹介します。
「正社員と同額の賞与」一部認定 パート訴訟で大分地裁 同等待遇の法的根拠は認めず
2013.12.10 18:59 (産経ニュース)
正社員と同じ業務内容にもかかわらず、パート労働者であるためにボーナスや休日の割り増し賃金が低いのは違法として、大分市の男性(50)が勤務先の運送会社(東京)に、差額分の支払いや慰謝料などを求めた訴訟の判決で、大分地裁は10日、請求の一部を認め会社に約325万円の支払いを命じた。
判決で中平健裁判官は「業務内容は正社員と同じであり、賞与や休日の割り増し分の差別に合理的な理由はない」と判断した。原告側は差別的扱いを禁じたパート労働法を根拠に、正社員と同等の待遇も求めたが、判決は「同じ待遇にするべきだとする法規定はない」として退けた。
判決によると、男性は2006年からパート労働法の対象となる「準社員」として、大分事業所で貨物自動車の運転手として勤務した。1日あたりの労働時間は正社員より1時間短い7時間だったが、業務内容は正社員と同じだった。
●パートタイム労働法とは
パートタイム労働法は、正式には、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といいます。略称として「パートタイム労働法」、「パート労働法」が使われております。
●パートタイム労働法の対象
パートタイム労働法の対象である「短時間労働者(パート労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パート労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
●パートタイム労働法第8条
パートタイム労働法第8条は、以下のように、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止を定めています。
1. 事業主は、職務の内容、退職までの長期的な人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一のパートタイム労働者であって、期間の定めのない労働契約を締結している者については、パートタイム労働者であることを理由として、その待遇について、差別的取扱いをしてはならない。
2. 1の期間の定めのない労働契約には、反復更新によって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる有期契約を含むものとする。
●対象者:3要件を満たすパートタイム労働者
1.職務の内容が同じ
2.人材活用の仕組みや運用など が全雇用期間を通じて同じ
「人材活用の仕組みや運用などが全雇用期間を通じて同じ」とは、パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムや慣行から判断して同じ、となる場合です。
3.契約期間が実質的に無期契約
(1)「契約期間が実質的に無期契約」とは、次の2つの場合です。
a)期間の定めのない労働契約を結んでいる場合
b)期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合
(2)期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合の主な判断基準は、以下のとおりです
a) 業務の客観的内容
(恒常的な業務に従事しているのか、臨時的な業務に従事しているのか、通常の労働者の業務との違いがあるのか)
b) 契約上の地位の性格
(契約上の地位が臨時的か)
c) 当事者の主観的態様
(継続雇用を期待させる事業主の言動や認識があったか)
d) 更新の手続・実態
(反復更新の有無や回数、勤続年数、契約更新時の手続方法)
e) 他の労働者の更新状況
(同様の地位にある労働者の雇い止めの有無)