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代表弁護士 小川敦也

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懲戒解雇と退職金

事件名

退職金請求控訴事件

東京高等裁判所平成14年(ネ)第6224号

平成15年12月11日判決 小田急電鉄事件

争 点:懲戒解雇の場合の退職金不支給条項の有効性

上記のような退職金の支給制限規定は,一方で,退職金が功労報償的な性格を有することに由来するものである。しかし,他方,退職金は,賃金の後払い的な性格を有し,従業員の退職後の生活保障という意味合いをも有するものである。ことに,本件のように,退職金支給規則に基づき,給与及び勤続年数を基準として,支給条件が明確に規定されている場合には,その退職金は,賃金の後払い的な意味合いが強い。

 そして,その場合,従業員は,そのような退職金の受給を見込んで,それを前提にローンによる住宅の取得等の生活設計を立てている場合も多いと考えられる。それは必ずしも不合理な期待とはいえないのであるから,そのような期待を剥奪するには,相当の合理的理由が必要とされる。そのような事情がない場合には,懲戒解雇の場合であっても,本件条項は全面的に適用されないというべきである。

そうすると,このような賃金の後払い的要素の強い退職金について,その退職金全額を不支給とするには,それが当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である。ことに,それが,業務上の横領や背任など,会社に対する直接の背信行為とはいえない職務外の非違行為である場合には,それが会社の名誉信用を著しく害し,会社に無視しえないような現実的損害を生じさせるなど,上記のような犯罪行為に匹敵するような強度な背信性を有することが必要であると解される。

退職金が功労報償的な性格を有するものであること,そして,その支給の可否については,会社の側に一定の合理的な裁量の余地があると考えられることからすれば,当該職務外の非違行為が,上記のような強度な背信性を有するとまではいえない場合であっても,常に退職金の全額を支給すべきであるとはいえない。

 そうすると,このような場合には,当該不信行為の具体的内容と被解雇者の勤続の功などの個別的事情に応じ,退職金のうち,一定割合を支給すべきものである。本件条項は,このような趣旨を定めたものと解すべきであり,その限度で,合理性を持つと考えられる。なお,上記(1)認定のように,被控訴人において,過去に,懲戒解雇の場合であっても,一定の割合で減額された退職金が支給された例があることは,本件条項を上記のように解すべきことの1つの裏付けとなるものである。また,本件後に被控訴人の会社で設けられた諭旨解雇の制度において,退職金の一定割合の支給が認められているのも,上記の解釈と基本的に通じる考え方に基づくものと理解される。

本件でこれをみるに,本件行為が悪質なものであり,決して犯情が軽微なものとはいえないこと,また,控訴人は,過去に3度にわたり,痴漢行為で検挙されたのみならず,本件行為の約半年前にも痴漢行為で逮捕され,罰金刑に処せられたこと,そして,その時には昇給停止及び降職という処分にとどめられ,引き続き被控訴人における勤務を続けながら,やり直しの機会を与えられたにもかかわらず,さらに同種行為で検挙され,正式に起訴されるに至ったものであること,控訴人は,この種の痴漢行為を率先して防止,撲滅すべき電鉄会社の社員であったことは,上記(2)記載のとおりである。

 このような面だけをみれば,本件では,控訴人の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があったと評価する余地もないではない。

しかし,他方,本件行為及び控訴人の過去の痴漢行為は,いずれも電車内での事件とはいえ,会社の業務自体とは関係なくなされた,控訴人の私生活上の行為である。

 そして,これらについては,報道等によって,社外にその事実が明らかにされたわけではなく,被控訴人の社会的評価や信用の低下や毀損が現実に生じたわけではない。なお,控訴人が電鉄会社に勤務する社員として,痴漢行為のような乗客に迷惑を及ぼす行為をしてはならないという職務上のモラルがあることは前述のとおりである。しかし,それが雇用を継続するか否かの判断においてはともかく,賃金の後払い的な要素を含む退職金の支給・不支給の点について,決定的な影響を及ぼすような事情であるとは認め難い。 

 さらに,上記(1)認定事実からすれば,被控訴人において,過去に退職金の一部が支給された事例は,いずれも金額の多寡はともかく,業務上取り扱う金銭の着服という会社に対する直接の背信行為である。本件行為が被害者に与える影響からすれば,決して軽微な犯罪であるなどとはいえないことは前記説示のとおりであるが,会社に対する関係では,直ちに直接的な背信行為とまでは断定できない。そうすると,それらの者が過去に処分歴がなく,いわゆる初犯であった(当審証人D)という点を考慮しても,それが本件事案と対比して,背信性が軽度であると言い切れるか否か疑問が残る。

 加えて,控訴人の功労という面を検討しても,その20年余の勤務態度が非常に真面目であったことは被控訴人の人事担当者も認めるところである(当審証人D)。また,控訴人は,旅行業の取扱主任の資格も取得するなど,自己の職務上の能力を高める努力をしていた様子も窺われる。

このようにみてくると,本件行為が,上記イのような相当強度な背信性を持つ行為であるとまではいえないと考えられる。

 そうすると,被控訴人は,本件条項に基づき,その退職金の全額について,支給を拒むことはできないというべきである。しかし,他方,上記のように,本件行為が職務外の行為であるとはいえ,会社及び従業員を挙げて痴漢撲滅に取り組んでいる被控訴人にとって,相当の不信行為であることは否定できないのであるから,本件がその全額を支給すべき事案であるとは認め難い。

そうすると,本件については,上記ウに述べたところに従い,本来支給されるべき退職金のうち,一定割合での支給が認められるべきである。

 その具体的割合については,上述のような本件行為の性格,内容や,本件懲戒解雇に至った経緯,また,控訴人の過去の勤務態度等の諸事情に加え,とりわけ,過去の被控訴人における割合的な支給事例等をも考慮すれば、本来の退職金の支給額の3割である276万2535円であるとするのが相当である。

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