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代表弁護士 小川敦也

東京弁護士会

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けんかと安全配慮義務 佃運輸事件

事件名

神戸地方裁判所姫路支部

平成21年(ワ)第946号 債務不存在確認等請求事件

(甲事件本訴)

平成21年(ワ)第1533号 損害賠償請求反訴事件

(甲事件反訴)

平成22年(ワ)第164号 損害賠償請求事件

(乙事件)

平成23年3月11日判決 佃運輸事件

争 点:けんかと安全配慮義務

(1)安全配慮義務とは,ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において,当該法律関係の付随義務として当事者の一方または双方が相手方に対して信義則上負う義務のことであり,具体的には,使用者が,従業員に対し,使用者が業務遂行のために設置すべき場所,施設もしくは器具等の設置管理または従業員が使用者もしくは上司の指示のもとに遂行する業務の管理に当たって,従業員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を意味し,安全配慮義務の履行補助者が当然負うべき通常の注意義務は使用者の安全配慮義務には含まれない(最高裁昭和48年(オ)第383号同50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁,最高裁昭和55年(オ)第579号同58年5月27日第二小法廷判決・民集37巻4号477頁参照)。

(2)この点,乙山は,会社が他の従業員から暴力を振るわれることがないよう配慮し,乙山の生命・身体を危険から保護する義務を負っていたと主張する。しかし,小中学校ではあるまいし,会社が乙山が主張するような一般的な従業員間の暴力抑止義務のようなものを負っているとは認めがたい。もちろん,本件暴行以前から,甲野と乙山が顔を合わせれば暴力沙汰になっていたか,または,そうなりそうであったという状況が存在したのであれば,会社にとって本件暴行の発生は予見可能であり,したがって,両者の接触を避けるような人員配置を行う等の結果回避義務があったというべきである。しかしながら,本件暴行以前にこのような状況が存在していたと認めるに足りる証拠はないから,そもそも本件暴行の発生は会社にとって予見可能性の範囲外であり,したがって,会社はかかる結果回避義務を負わないものと解するのが相当である。

 乙山は,また,現実に喧嘩行為が発生し,または,喧嘩行為が発生しようとしていたのであるから,会社には,かかる喧嘩行為の発生によって乙山の生命・身体に危害が加えられないよう適切な処置,具体的には喧嘩行為を終了させるべき義務があったと主張する。しかしながら,上記のとおり,安全配慮義務は,主として,物的施設および人的組織の管理という業務遂行の前提条件の整備に関する義務であって,現に喧嘩行為が眼前で展開している場合に,これに使用者がどう対処すべきかという問題は,そもそも安全配慮義務の範疇外であるというべきである(もちろん,その際,上司等のあおり行為等があれば,それ自体が不法行為として問題となることは別論である)。

争 点:けんかと使用者責任

(1)被用者の暴行が「事業の執行について」(民法715条)に当たるか否かについては,かかる暴行が会社の事業の執行を契機とし,これと密接な関連を有すると認められるか否かによる(最高裁昭和44年(オ)第580号同年11月18日第三小法廷判決・民集23巻11号2079頁(以下「昭和44年最判」という)参照)。

(2)事業執行要件の該当性を判断するに当たっては,まず,客観的に見て事業執行行為と評価できる行為と暴行との時間的場所的な密接関連性が認められるかどうかが問題となる。

 昭和44年最判の事案は,土木建築業者の被用者が作業中に土木工事の現場で暴行を行ったものであって,場所的に事業執行の現場で時間的に事業執行中に行った暴行ということができる。本件における甲野の暴行についても,前記認定のとおり,会社加古川営業所敷地内における就業時間中の暴行であるから,同様にして,場所的に事業執行の現場で時間的に事業執行中に行った暴行ということができる。

 もっとも,かかる時間的場所的な関連性が認められても,それだけでは,「事業の執行に際して」加えた損害ということはできても,「事業の執行について」加えた損害ということはできない。もし,かかる時間的場所的な密接関連性だけで足りるとすれば,就業場所で就業時間中に行われた従業員による暴行すべてが,使用者責任の対象となることになって,報償責任・危険責任という使用者責任の理論的根拠を逸脱することになるからである。

(3)そこで,次に,暴行が生じた原因と事業執行行為との密接関連性が問題となる。

 昭和44年最判の事案では,作業用鋸の授受に関する紛争が契機となったものであるが,工事現場で作業に使用するために「鋸を貸してくれ」と声をかけたことは本来の事業の執行に含まれるものと評価でき,このことを契機として暴行が加えられたものであるから,暴行が生じた原因と事業執行行為とは密接な関連性を有するものということができる。

 これに対し,前記認定のとおり,本件暴行は,乙山が加古川営業所事務所内でAに対し配車について文句をつけ怒鳴り散らしていたところ,これを見かねた甲野が,自発的に乙山を外に連れ出そうとしたことに端を発するものである。

 この場合,暴行の契機となる事業執行行為とは何かということが問題となるが,まず,甲野の第2の暴行との関係で,甲野の第1の暴行が契機であるということができるけれども,甲野の第1の暴行は,それ自体暴行であるから既に事業執行行為といいにくいうえに,甲野の乙山を外に連れ出そうとする行為は,警備員の業務であるということはできても,運行管理係である甲野の固有の職務であるとはいえないし,上司であるAの業務命令に基づくものでもないから,付加的な職務であるということもできない。もちろん,運行管理に対する障害を除去し,これを円滑ならしめる行為はすべて運行管理係の職務の内容をなすものであるという立論が成り立つ余地もないではないが,このような概念操作をすると職務範囲の拡張に歯止めがかからなくなり,やはり報償責任・危険責任という使用者責任の理論的根拠を逸脱することになるから相当ではない。

 次に,甲野の第1の暴行以前において,甲野は,配車係としての職務に従事していたのは確かであるが,それは事務所内の自席に着座していたというだけのことであって,それ自体,暴行の契機となる事業執行行為と評価することはできず,むしろ,前記認定のとおり,本件暴行の契機となったのは乙山の言動の方であるといわざるを得ない。

 また,後記のとおり,乙山は結果的に甲野の第2の暴行により傷害を負い,それが乙山の損害賠償請求権の発生原因事実となっているのであるが,前記認定のとおり,かかる乙山の傷害が甲野と乙山のどちらが主導的に暴行を行ったことによるものか判然としないのであって,その契機を明確に特定することは困難である。

(4)そうすると,甲野の第2の暴行は,事業執行行為との時間的場所的な関連性は満たしているということはできるけれども,暴行が生じた原因と事業執行行為との密接関連性があるということはできないから,会社の事業の執行についてなされたものということはできない。

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