解雇制限の例外
業務災害による療養の場合は原則として解雇はできませんが、労働基準法では、次の2つの例外が定められています。
1.打切補償を支払った場合 |
2.天災事変等が原因で事業の継続が不可能となった場合 |
打切補償
打切補償とは、仕事が原因によるケガや病気で会社を休み始めて3年経っても治らないときに、会社が1200日分の平均賃金を支払うという制度です。
療養開始後3年を経過しても傷病が治癒しない場合に限り、使用者が平均賃金の1200日分の打切補償を支払うことを条件に、解雇できることになっています。打切補償を支払うかどうかは、会社の判断によります。
また、療養開始後3年経過時点で、傷病補償年金を受けている場合には、打切補償を行ったものとみなされ、解雇制限も解かれます。
最高裁は、「労災保険給付は、雇用側が負担する療養費に代わるもの。打ち切り補償後も、けがや病気が治るまでは給付が受けられる」との理由から、労災保険給付を受けている場合でも、打切補償金を支払えば解雇できるとしています。ただし、労働者の復帰可能性などを無視した解雇の場合、解雇権濫用にあたる可能性があることに注意が必要です。
労災保険受給の労働者「打ち切り補償払えば解雇可能」の初判断 最高裁が高裁に破棄差し戻し 労災認定を受け、国から労災保険の給付を受けている労働者について、使用者が一定の補償金を支払って解雇できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は8日、「労働者が労災保険を受給していれば、使用者が療養補償をしていない場合でも雇用打ち切りの補償金を支払って解雇できる」との初判断を示した。 その上で、解雇無効とした2審東京高裁判決を破棄、「正当な解雇か審理を尽くす必要がある」と高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。 労働基準法では、業務上の傷病で療養中の労働者を原則、解雇できないと規定。一方で使用者側が療養補償を行い、療養開始後3年を経過しても治らなければ、平均賃金1200日分の打ち切り補償を支払い解雇できるとしている。労災保険と療養補償を同質と見ることができるかが争点。 訴えているのは専修大元職員の男性(40)。男性は肩などの難病「頸肩腕(けいけんわん)症候群」を発症して長期欠勤、平成19年に労災認定を受け労災保険を受給している。大学側は療養補償していないが約1630万円の打ち切り補償を支払い23年10月に解雇した。 同小法廷は、「労災保険の給付は使用者側の療養補償に代わるものとして実質的に給付されている」と指摘。労災保険と療養補償が同質視できるとして、解雇は可能と結論づけた。 ただ、こうしたケースでも、労働者の復帰可能性などを無視した解雇の場合、解雇権乱用(原文ママ)にあたる可能性がある。2015.6.8 19:45産経ニュース |