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代表弁護士 小川敦也

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取締役の不当解任を理由とする損害賠償請求

 取締役は、いつでも株主総会の普通決議(ただし、決議の要件は定款で加重できる)で解任できるとされています(会社法339条1項)。解任の理由に法律上の制限はありません。もっとも、「正当な理由」がないのに任期満了前に取締役を解任した場合は、解任によって生じた損害を賠償しなければなりません(会社法339条2項)。

解任について正当な理由がある場合とは

 裁判においては、しばしば「解任について正当な理由」の存否が争われています。典型例としては、横領・背任行為や定款の手続を無視した職務執行など職務執行上の法令・定款違反行為、心身の故障のため職務執行に支障がある場合が挙げられます。

法令・定款違反行為、心身の故障 

 取締役に職務執行上の法令・定款違反行為があった場合や、心身の故障のため職務執行に支障がある場合には正当事由が認められます。

原審が適法に確定した事実は、

(1)被上告会社の代表取締役であった上告人は、昭和五二年九月ころ持病が悪化したので、被上告会社の業務から退き療養に専念するため、その有していた被上告会社の株式全部を被上告会社の取締役Sに譲渡し、Sと代表取締役の地位を交替した、

(2)そしてSは、経営陣の一新を図るため同年一〇月三一日開催の臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、原告を取締役から解任した、というのであり、右事実関係のもとにおいては、被上告会社による上告人の取締役の解任につき商法二五七条一項但書にいう正当な理由がないとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。(最判昭和57年1月21日)

職務への著しい不適任 

 職務への著しい不適任・経営能力の著しい欠如も正当な理由となります。

監査役は善良なる管理者の注意を用いて事務を処理する義務を負い(商法二八〇条、二五四条三項、民法六四四条)、取締役の職務の執行を会計のみなず、業務全般にわたって監査する権限(同法二七四条・二七五条)を行使するについても、これに必要な識見を有することが期待されるところであるから、監査役たる控訴人自身が前記のような明らかな税務処理上の過誤を犯したことは、被控訴会社に与えた実害の有無、程度にかかわらず、監査役として著しく不適任であるといわざるを得ない。

 そして、《証拠略》によると、控訴人は被控訴会社に対し、昭和五二年二月一五日付内容証明郵便をもって金九二〇〇万円及びこれに対する同月以降月五分の割合による利息であるという二七六〇万円の各支払いを請求したが(控訴人が被控訴会社に対し月五分の利息で金員を貸し付けたこと、昭和五二年二月ころ、内容証明郵便でその返済を請求したことは当事者間に争いがない。)、これに対し、被控訴会社は、会社の業績に鑑み右貸金の利率として定められた月五分の割合は昭和五二年一月までこれを半分にし、かつ、当該半分の割合の利息の支払を猶予してもらい、昭和五二年一、二月ころになってからも、しばしば支払の猶予を懇請したにもかかわらず、控訴人が唐突に支払請求の挙に出たとして、控訴人の前記請求に応じなかったという出来事があり、右出来事が直接のきっかけとなって、控訴人と被控訴会社との間に対立関係が顕在化するに至ったことが認められ、右当事者間の対立関係をも背景として斟酌すると、右貸金問題における双方の言分のいずれを最終的に是とすべきかは別として、前示のような税務処理上の過誤を犯した控訴人をそのまま被控訴会社の監査役の地位に留め置くべきであるとすることは無理であり、ひっきょう、被控訴会社が控訴人を被控訴会社の監査役から解任したことは正当な事由があるというべきである。東京高裁昭五五(ネ)九一五号昭58・4・28

経営判断の失敗

 経営判断の失敗が正当理由となるかどうかについては,争いがあります。これまでの裁判例の中にも,取締役の経営判断を尊重して,解任事由なしとしたもの(神戸地判昭和51618判時843107頁)や経営判断の誤りによって会社に損害を与えた以上,正当理由ありとしたもの(広島地判平成61129判タ884230頁)があります。

主観的な信頼関係喪失

 正当な理由が認められるのは,当該取締役に経営を行わしめるにあたって障害となるべき状況が客観的に生じた場合に限るとされ,大株主の好みや,より適任者がいるというような単なる主観的な事情では,正当理由は認められないとされています(東京地判平成8年8月1日)。

損害賠償の範囲

 賠償されるべき損害の範囲は、一般に、取締役を解任されなければ残存の任期中及び任期終了時に得られたであろう利益の額とされています。

残存任期中の役員報酬

 残存任期中の役員報酬は損害に含まれます。

退職慰労金

 退職慰労金については,定款に定めがある場合を除き,株主総会の決議により,初めて支給が認められるものですから,当然には損害に含まれるものではありません。しかし、退職慰労金規定や過去に支給してきた慣行があり、これらによって一定の基準に基づく退職慰労金が支払われることとなっている場合には、退職慰労金を損害として認めることがあります。

被告としては、昭和四〇年一二月以来一三年余に亘って被告会社に勤務してきた原告に対し、特段の事情のないかぎり、相応の退職金を支給しなければならないものというべきである。この点について、被告は、原告は取締役であるから被告会社退職金支給規程の適用がない旨主張するけれども、そのことが直ちに退職金を支給しなくてもよいとする結論に結びつくものでないことは、現に、被告もその昭和五五年一〇月二日付準備書面の第三項において、原告が自主的に取締役を退任した場合には退職金を支払うべきことを予定していたものと解するほかない主張をしているところに照らしても明白である。そして、前記のとおり原告の取締役解任には正当事由がないのであるから、原告に対して退職金を支給しなくてもよいとする特段の事情もないものというべきである。昭和57・12・23東京地裁民事第三六部判決

取締役が任期の途中で解任され、残任期間に対応する分だけ退職金が減額されるとすれば、その額は一応前記損害に該当すると考えられる。しかして、役員退職金も商法二六九条が準用され、定款に規定がない限り、別途株主総会の決議を要することろ、《証拠略》によると、控訴人の定款には役員の退職金に関する定めが存在せず、また、従業員に関しても退職金に関する定めが存在しないこと、被控訴人に対し退職金を支払う旨の株主総会の決議がなされていないこと、被控訴人以前に取締役で退任した者がおらず、これに関する慣行も存在しなかったこと、被控訴人解任後、控訴人の取締役であったYが昭和五一年一〇月一六日退任し、監査役であったHも同日解任されているが、いずれも退職金を支払われていないことの各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。してみれば、被控訴人は、当然には退職金を請求しうる立場になかったのであるから、退職金をもって前記損害にあたるということはできない。

大阪高裁昭五四(ネ)一二五二号・一七五五号昭56・1・30民七部判決

役員賞与

役員賞与は、取締役の報酬とともに,報酬等として会社法361条の株主総会決議により支給されます。したがって,退職慰労金と同じ議論が妥当すると考えられます。

慰謝料

 慰謝料については,損害に含まれないとするのが多数説です(東京地判昭和571223)。ただし、解任について会社の不法行為責任が成立するような特殊な事情がある場合には、慰謝料まで認められる余地もあります。

原告は慰藉料をも請求するけれども、この種事案にあって慰藉料まで請求しうるとするのが相当でないことは多く論ずるまでもない。昭和57・12・23東京地裁民事第三六部判決

弁護士費用

 弁護士費用は,損害に含まれないとするのが多数説・裁判例ですが,不当応訴等の特段の事情がある場合には損害として認められる余地もあります(大阪高判昭和56130)。

商法二五七条一項但し書にいう損害の賠償請求は会社と取締役との委任契約の不履行を原因とするものである(従って、不法行為に基づく損害賠償請求とは本質的に異る。)から、右請求訴訟の弁護士費用は、不当応訴等の特段の事情がないかぎり当然発生する損害とは認められないところ、右特段の事情の主張、立証もないから、右費用の請求は理由がない。

大阪高裁昭五四(ネ)一二五二号・一七五五号昭56・1・30民七部判決


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