雇用調整(人員削減・事業縮小)のリスク
厳しい経済状況の中,企業の生き残りをかけ,雇用調整(人員削減・事業縮小)を迫られることもあります。雇用調整は、変化と競争の時代において、企業が存続していくためにはやむを得ない措置です。しかし,正しい手順を踏んで行わなければ,解雇が無効になるだけでなく、従業員の士気が低下し、ひいては、生産性を低下を招きます。また、長年培った企業の社会的信用も失いかねません。
人員削減の手順
企業としては、退職を伴う雇用調整を行う前に、時間外労働の削減、一時休業、採用の抑制・停止、配置転換、出向など、退職を伴わない雇用調整を幅広く、かつ積極的に行い、それでも近い将来において経営環境が好転する見通しがない場合にはじめて、退職を伴う雇用調整に踏み切ることになります。
短期的施策 | 中長期施策 | ||
人員 | 非正規社員 | 雇い止め | |
契約期間満了前打ち切り | |||
採用抑制 | |||
正社員 |
早期退職・希望退職 |
会社分割 | |
退職勧奨 | 事業譲渡 | ||
出向・転籍 | 事業撤退 | ||
採用抑制 | 組織再編 | ||
単価 | 賞与カット | 給与水準の見直し | |
昇給凍結 | 給与構成の見直し | ||
給与カット | |||
労働時間 | 残業抑制 | ||
変形労働時間制(裁量労働・フレックス) | |||
生産調整・業務停止 |
雇用調整の手始めとして、まずは退職を伴わない雇用調整策から手を付けるのが穏当です。
前述のリスクを回避するためにも、退職を伴う雇用調整策は、他の調整策でも人員余剰が解消されない場合に使います。
(1)労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)の制度概要
事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者等に対し、民間の職業紹介事業者に労働者の再就職支援を委託し再就職を実現させた中小企業事業主に、助成金が支給されます。
(2)受給額
本助成金は、再就職援助計画の認定または求職活動支援基本計画書の提出時点での、支給申請者の年齢に応じて下記の額が支給されます。
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対象者が45歳未満の場合 |
対象者が45歳以上の場合 |
助成率 |
委託費用の1/2 |
委託費用の2/3 |
支給対象者1人当たり40万円、同一の計画について300人を上限とします。
(3)主な受給要件
受給するためには、次の要件のいずれも満たすことが必要です。
(1)次のいずれかに該当すること。
[1]雇用対策法に基づく 再就職援助計画 を作成し、公共職業安定所長の認定を受けること [2]雇用保険法施行規則に基づく求職活動支援基本計画書を作成し、都道府県労働局長又は公共職業安定所長に提出すること。
(2)中小企業事業主であること。
(3)再就職援助計画の認定後(又は求職活動支援基本計画書の提出後)に、計画対象者の再就職支援を民間の職業紹介事業者に委託すること。
(4)計画対象者の離職の日から2か月以内(45歳以上の対象者については5か月以内)に再就職を実現すること
(5)(3)の委託に係る計画対象者に対し、求職活動等のための休暇を1日以上与え当該休暇の日について、通常の賃金の額以上の額を支払うこと。
リストラ促す助成金、3月から拡充 政府の成長戦略
朝日新聞デジタル 平成26年2月21日(金)20時27分配信 従業員を転職させる企業に国がお金を出す「労働移動支援助成金」が3月から大幅拡充される。企業が再就職支援会社に払う費用を、転職者1人につき最大60万円まで補助。業績不振の産業にリストラを促し、人手不足の「成長産業」で働く人を増やすねらいだ。 政府が成長戦略で掲げる「失業なき労働移動」の目玉策だ。いまの助成額は上限40万円で、転職成功時に限ってお金が出る。これを改め、上限額を1・5倍に増やす。たとえ成功しなくても、従業員の転職先探しを再就職支援会社に頼めば10万円を出す。利用できる対象企業も、中小だけでなく、大企業にも広げる。 |