労働者側の都合による退職であっても、退職の意思の確認や、退職に向けた引き継ぎなど、人事・労務管理上必要な事務手続きは少なくありません。詳しくは墨田区錦糸町・押上アライアンス法律事務所まで
退職願の提出
退職の意思表示は口頭によるものでも足りますが、退職日や退職の意思、退職理由等について明確な証拠を残すためにも、労働者に書面を提出するよう求めます。
他方、会社として退職を承認する場合には、合意退職であることを明確にし、退職に向けた引き継ぎや事務手続きの流れを明らかにするための書面を交付すべきでしょう。
退職願の撤回
(1)辞職の意思表示の場合
労働者による一方的な解約の意思表示である辞職の意思表示の場合、その意思表示が使用者に到達し効力が生じた後は撤回することができないとされています。もっとも、使用者が辞職の意思表示の撤回に同意することは可能です。
(2)合意解約の申込みの場合
雇用契約における合意解約の申込みは、使用者に不測の損害を与えるなど信義則に反すると認められるような特段の事情がないかぎり、使用者が承諾の意思表示をなすまで労働者はこれを撤回することができます。
※退職願が提出された場合には、一般的には、使用者の態度行かんにかかわらず雇用契約を終了させる旨の意思が客観的に明らかな場合を除いて、合意解約の申込みと解されます。
(1)労働者の退職の自由
一般的には、労働者には退職の自由があり、退職についても使用者の許可を必要するような就業規則の規定は無効とされています。
しかし、入社直後の突然退職が会社に対し与える損害は、募集にかかった広告費、研修費といった直接的な損害はもちろん、他の従業員を採用する機会の喪失、営業の機会の喪失等、甚大です。
従来このような損害は、使用者側が経営上、負うべきリスクの範囲内の問題とされておりました。裁判例においても従業員に対する損害賠償を実質的に認めるものもありますが、従業員側が負うべき損害の範囲は限定されております。
(2)予防策
従業員の突然の退職そのものを拒否することは法律上できません。そうなると、まず、採用段階の審査を厳しくすることでこのような被害を回避することが重要となります。
次に、1ヶ月の退職予告期間を就業規則上定めることも不可欠です。具体的には、翌月の初めに退職したい場合は、当月の15日までに予告が必要で、15日過ぎの予告の場合、退職の効果が発生するのは翌々月の初め以降となること定めます。そして、退職金や精・皆勤手当において退職申出後の退職日までのフル稼働なき場合の減額規定をおくことも大切です。
労働基準法39条1項は、年次有給休暇について以下のように定めています。
使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。 |
使用者が未消化年休を買上げたりまたは買上げの予約をすることは、この労基法39条に違反することになります(昭30.11.30基収4718号)
しかし、本条は年休付与後の取り扱いについては規定していないので、結果的に取得されなかった年休について買い上げをすることは許されると解されています。すなわち、2年の時効、あるいは退職によって権利が消滅するような場合に、残日数に応じて調整的に金銭の給付を行うことは、事前の買い上げと異なり、39条違反とはなりません。
また、法定日数を超えて付与された年休につき、法定日数を上回る分について買い上げを行ってもそれは労基法上の年休の取り扱いの問題では無いので、労働者がこれに同意していれば問題はありません。