紛争化しやすい解雇事案
厚生労働省の調べによれば,各都道府県労働局に寄せられる労働紛争相談案件のうち最も多いのが「解雇」に関する相談で,全体の2割以上となっています。解雇された労働者にとってみれば,生活の途を断たれるのですから,紛争になりやすいことであることは明らかです。
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労働契約 |
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人間関係 |
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解雇に伴う企業側のリスク
解雇にまつわる企業側のリスクとしては,①解雇が無効となった場合,労働者が職場に復帰することによって企業秩序が混乱すること,②解雇事に遡って支払うことになる賃金の負担,③解雇した労働者や労働組合に対する対応,労使活動による社会的信用の毀損等が考えられます。
解雇リスクを回避するために
こういった解雇に伴うリスクを回避するための企業側の措置として,解雇にあたり,その正当性・公平性・透明性を高め,適正な手続きを経ることが重要になります。
具体的には,まず,当該労働者の問題行動やそれに対する企業側の対応はできる限る記録に残しておきます。その際,どのような対応をとるかについて,事前に客観的な指標を定めておくことも必須です。さらに,具体的な方策を講じるにあたり,当該労働者に弁明の機会を与える必要があります。場合によっては,労働者側の代表者や弁護士等の第三者の意見を仰ぐことも有用です。
2度目の解雇も「無効」 元米通信社記者が勝訴 米通信社B社東京支局元記者の日本人男性(53)が、雇用関係にあるかを争った訴訟の判決で、東京地裁は28日、「解雇は不合理で無効だ」として雇用関係を認めた。 男性は以前の訴訟で勝ったが、B社記者職以外への復帰を提案、協議に応じないことを理由に再び解雇していた。鷹野旭裁判官は「提案に応じる義務はなく、拒否しても責任はない」と述べた。 判決などによると、男性は平成17年11月に中途採用。週1本の特ダネ記事を求められ、目標を達成できなかったとして22年8月に解雇された。解雇は無効と提訴し、1、2審で認められたが、25年3月に再び解雇通知を受けた。 判決後に記者会見した男性は「会社は復職させまいと無理な理屈で訴えており、勝訴は当然だ」と話した。一方、B社「判決を残念に思う。引き続き解決に努めたい」とコメントした。2015.5.28 21:33産経ニュース |
技能実習生について、解雇や雇止め、労働条件の切下げ等がなされる場合は、日本人労働者と同様に、労働基準法等で定める法定労働条件が確保されなければなりません。また、労働契約法や裁判例等に照らしても適切な取扱いが行われなければならないことに注意が必要です。
中国人研修生を不当解雇 メーカーなどに賠償命令 金沢地裁 2014.3.10 14:26 産経ニュース 研修中に労働者として働かされ、不当な理由で解雇されたとして、中国人の宋銘銘さん(25)=中国・大連市=が、就労先の電子機器メーカー北日本電子(石川県加賀市)と、中国人技能実習生を受け入れる協同組合五光(富山県南砺市)に計約500万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、金沢地裁小松支部は10日までに、解雇を無効としメーカーと五光に計約310万円の支払いを命じた。 判決などによると、宋さんは平成21年11月に研修生として来日し、北日本電子で就労。24年4月に元同僚と会ったことが、従業員以外との接触などを禁じた五光が設けた規則に反するとして、雇用期間満了前に帰国を命じられた。 小野瀬昭裁判官は判決理由で研修中の1年間も実態は労働者だったと認定。元同僚と会ったことは解雇の正当理由に当たらず、研修中の未払い賃金や宋さんの精神的苦痛に対する慰謝料などが認められるとした。 北日本電子は「判決文の内容次第では控訴も視野に入れて考えたい」とした。 |
解雇が不法行為を構成するか否かについては、懲戒解雇や普通解雇は、それが権利濫用のための無効と判断される場合にも直ちに不法行為になるわけではなく、不法行為の成否については、①故意・過失、②損害の発生、③因果関係といった成立要件をここに検討した上で判断すべきと解されています。
解雇が不法行為を構成する場合としては、使用者に積極的害意がある場合など、解雇が著しく相当性を欠く場合が例として挙げられます。
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