公正な採用選考
公正な採用選考とは、本人(応募者)のもつ適正・能力の身を基準として判断することです。家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定することは、結果として優秀な人材を採用する機会を失うことにつながります。そのため、応募者の適性・能力に関係のない事柄について、応募用紙に記入させたり、面接で質問することなどによって把握しないようにすることが重要です。
採用選考時に配慮すべき事項
次の1や2のような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、3を実施することは、就職差別につながるおそれがありますので、採用選考にあたって注意が必要です。
1.本人に責任のない事項の把握 |
本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します) |
家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します) |
住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など) |
生活環境・家庭環境などに関すること |
2.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握 |
宗教に関すること |
支持政党に関すること |
人生観、生活信条に関すること |
尊敬する人物に関すること |
思想に関すること |
労働組合・学生運動など社会運動に関すること |
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること |
3.採用選考の方法 |
身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります) |
合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施 |
採用時に退職証明書を提出させることの可否
労働基準法第22条は、「労働者が退職の場合に在職中の契約内容などについて証明書の交付を請求したときは、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」としています。使用者が労働者の請求に応じて証明義務があるのは、次の5項目です。
1 使用期間 |
2 業務の種類 |
3 当該業務における地位 |
4 賃金 |
5 退職の事由(解雇の場合は解雇の理由を含む) |
なお、使用者は、労働者が請求した事項についてのみ証明する義務があり、請求されていない事項は法定項目でも証明してはなりません。
採用にあたり、応募者に退職証明書の提出を求めることは、一般的におこなわれておりますが、退職証明書の提出を義務付けることまではできません。もっとも、企業がどのような人物を採用するかは企業の自由ですから、退職証明書を提出しないことをもって不採用とすることは可能です。ただし、退職時の証明書の請求権の時効は、退職時から2年ですので、それ以前のの退職証明書を求めることは難しいでしょう。