労働条件の変更
会社経営においては、コスト削減・業務内容の変化などを様々な理由から労働条件を変更せざるを得ない場面に出くわします。しかし、労働条件の変更は、労働者の生活に直接影響を与えるもの。労働法規の内容・趣旨を理解し、適正な手続きを踏まえて行わなければなりません。
労働条件変更の有効要件
使用者が労働条件変更を行おうとする場合、労働者が当該変更に同意することが原則として要求されます。ただし、当該合意は、労基法などの強行法規に違反したり、就業規則・労働協約の定めよりも労働者に不利な労働条件を定めたりするものであってはなりません。
例外的に、労働者使用者間の合意によらない労働条件変更が許容される場合としては、就業規則又は労働協約によって労働条件を変更する場合と、使用者が労働条件を変更する権限を有することが労働契約に定められている場合とがあり、それぞれ、一定の要件の下で労働条件変更の効力が認められます。
労働契約の変更は、労働者と使用者の合意により行うのが原則です。労働者と使用者が合意すれば、労働条件を変更することができます。
(1)就業規則の変更によって既存の労働条件を引き下げることは原則として許されません。しかし、①労働条件の変更に「合理性」があり、かつ、②変更後の就業規則が労働者に周知されている場合には変更に反対の労働者にも変更の効力が及び、労働条件の引下げが認められます。
(2)就業規則変更の「合理性」の有無の判断は、①就業規則変更の必要性の内容・程度と②労働者が被る不利益を比較することによって行われます。その際、賃金等の重要な労働条件の不利益変更については「高度の必要性」が求められます。具体的判断においては、これらの点に加え、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合との交渉の経緯、⑤代償措置の有無や程度、⑥他の労働組合や従業員の対応、⑦変更された内容の社会的相当性なども総合的に考慮されます。