●1週・1日の労働時間規制(労基法32条)
使用者は、労働者に、休憩時間を除いて、1週40時間を超えて労働させてはならず(同条1項)、かつ、1日8時間を超えて労働させてはならない(同条2項)とされています。
●労基法32条に違反した場合の制裁とその効力
これに違反して労働者に労働させた使用者には、刑事罰による制裁がありますし(同119条)、労働者とこうした規制に違反する合意をした場合でも、その合意は無効となり、無効となった部分は上記の基準のとおりに修正されます(同13条)。労基法33条や36条などにより、一定の要件のもとに時間外労働をさせることはできますが、その場合でも、使用者は割増賃金を支払わなければなりません(同37条)。
●労働時間規制の特例
以上に対して、同40条に基づく恒常的特例として、10人未満の商業やサービス業等では、現在週44時間制がとられています。また、農業・畜産業・水産業の労働者、管理監督者および機密事務取扱者、ならびに監視断続労働に従事する労働者(行政官庁の許可が必要です)については、労働時間に関する規制は適用が除外されます(同41条。ただし、休暇・休業や深夜割増賃金の規制は適用されます)。
●労働時間規制が適用されない管理監督者とは
管理監督者に当たるかどうかは、肩書きの名称ではなく、労働条件の決定その他労務管理に関して経営者と一体的立場にある者といえるか否かを、実態に即して判断することとされています(昭63.3.14基発150号、日本マクドナルド事件・東京地判平成20年1月28日)。
●1週間・1日
労働時間が40時間を超えたかどうかを判断する単位となる1週間は、就業規則等に定めがあればそれにより、そうした定めがなければ、日曜日から土曜日までの暦週をいいます(昭63.1.1基発1号(1.法定労働時間 (2).一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間))。同じく、8時間を超えたかどうかを判断する単位となる1日とは、原則として午前0時から午後12時までの暦日をいいますが、午後12時前に始まった勤務が翌日に及んだ場合の労働時間は、翌日が休日でないかぎり、前日の勤務と一体のものとして判断されます。
●労働時間の把握・管理
このような労基法上の労働時間の規制は、原則として、現実に働いた時間としての実労働時間により行われます(いわゆる裁量労働や事業場外労働の場合にはみなし労働時間による処理が認められる場合があります)。使用者としては、賃金や割増賃金の支払の必要上、各労働者の労働時間を把握する必要がありますし、労基法上も、賃金台帳に各人の労働時間を記載しなければなりません(労働基準法施行規則54条1項5号)。