労働基準法における
「労働時間」について
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●労働時間とは実労働時間
労働基準法上、「労働時間」とは休憩時間を除いた実労働時間を指します。そして、そもそも「労働時間」とは何かをめぐっては、まず、労働時間に当たるか否かを労使当事者が就業規則や労働協約、あるいは個別労働契約により決められるかという問題が生じますが、労基法は当事者の合意に優先する強行法規であることから(同13条)、労働時間該当性は、当事者の主観的な意思によっては左右できず、客観的に決まるものであると一般的に考えられています(三菱重工業長崎造船所事件・最一小判平成12年3月9日)。
●労働時間かどうかの判断~指揮命令下説~
「労働時間」を客観的判断するにあたり、どのような基準で判断するかが問題となります。この点について、上記の最高裁判決は、労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間であるとしております(指揮命令下説)。
●「指揮命令下」とは
もっとも、「指揮命令下にある」か否か、実際の事案においては必ずしも明確に分けられるとは限りません。この最高裁判決は、更衣等の作業準備行為に関して、そうした行為を事業所内において行うことを使用者から義務づけられ、またはこれを行うことを余儀なくされた場合には、当該行為は原則として使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるとしていますので、問題の行為に関する使用者の義務づけ(またはそれと同視される状況)が重視されるように思われます。その他に、問題となる行動がどの程度職務としての性格をもつかも考慮されるでしょう。
●手待時間は労働時間か
店員が顧客を待っている間のいわゆる「手待時間」は、その間特に実作業を行っていなくとも、一般に労働時間に当たると解されています。
●夜間の仮眠時間は労働時間か
ビル管理会社の従業員が管理・警備業務の途中に与えられる夜間の仮眠時間も、仮眠場所が制約されることや、仮眠中も突発事態への対応を義務づけられていることを理由に、労働時間に当たるとする判例が多くみられます(大星ビル管理事件・最一小判平成14年2月28日など)。なお、管理業務等の場合は、労基法41条3号の定める監視断続労働の許可を得れば、労働時間規制の適用が除外される場合があります(平5.2.24基発110号)。
●更衣時間は労働時間か
実作業に入る前や作業終了後の更衣時間については、最高裁は、使用者が造船所の労働者に事業所内での作業服等の着脱を義務づけていた事案において、就業規則等の定めにかかわらず、そうした更衣時間は労働時間に当たると判断しました(三菱重工業長崎造船所事件)。ただし、最高裁は、そうした更衣に要する時間も「社会通念上必要と認められるものである限り」労働時間に当たるとして、一定の限定を付していますし、一般の事務職の制服についての更衣時間に関してこの判決の射程距離がどこまで及ぶかは、必ずしも明らかではありません。
●研修等の所定労働時間外活動
研修や小集団活動(QCサークルなど)、あるいは運動会などが、所定労働時間外に行われた場合、これらが労働時間に当たるかが問題となります。一概に判断はできませんが、これらの活動が強制されたものかどうかを、職務との関連性の程度も加味して判断されることになるでしょう。
●自発的残業、持帰り残業
いわゆる自発的残業や持帰り残業は、使用者の黙認や許容があった場合には労働時間となると解されています。いかなる場合に使用者の黙認や許容があったといいうるかは事実関係により異なりますが、一般には、自発的残業等をしないことを明示的に指示し、それが行われているときには中止を求めるなどの措置が必要だと思われます。もっとも、定時に終わらせることが明らかに無理な量の業務を与えた場合には、そうした措置は形だけのものにすぎないと判断されることがありうるでしょう。
(1)出張中の労働時間
労基法第38条の2第1項は、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と定めています。 出張は,通常、事業場外で業務に従事し、使用者がその実際の労働時間を確認することはむずかしい場合にあたるので、所定労働時間労働したものとみなされます。
(2)出張時の移動時間
出張の際の往復の旅行時間が労働時間に該当するかどうかについて,一般的には、純然たる移動時間は使用者の指揮命令にはなく、労働者に自由裁量がある時間として、通勤時間と同様に労働時間ではないとしてよいとの行政解釈があります。
裁判例にも,「出張の際の往復に要する時間は,労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから,右所要時間は労働時間に算入されず,したがってまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」としたものがあります(日本工業検査事件・横浜地判川崎支判昭和49年1月26日)。
ただし,出張の目的が物品の運搬自体であるとか,物品の監視等について特別の指示がなされているとか,特別な病人の監視看護に当たるといった場合には,使用者の指揮監督下で労働しているといえますので,労働時間に含まれると考えるべきでしょう。 また、社用車の運転による移動も、職務上の規律が及んでいると解されるケースが多く、原則として労働時間になると考えられます。
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